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復元版全体について

2011年8月

1965年のCalifornia 大学BerkeleyExecutive Program

            Management Education Program の受講報告書の復元版

井上 義祐

 

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この報告書を書いて50年近く過ぎようとしている。その間の技術進歩は驚くべきものでその多くは役に立たない。しかし人間性に関わることはこれも驚くほど変わらず重要であることにこれらを読み返してみて改めて気付く。その意味でこれを収録することとした。

いまもこの内容の著作権は、基本的にはカルフォルニア大学バークレイ校および講義担当の諸教授、なかでも多くはProf. Cheit にあろう。また、この出張自体が八幡製鐵からの派遣で、報告書は同社とこの企画元の青年協議会に宛てで、本来ならばそれらの公開許可も必要であろう。しかし、会社の機密に属することは含まず、しかも45年以上前のことなので、著作権の問題はある程度の時効と免じてもらい、配布を私的限定するという形での発表を許して戴くことにする。また、報告書は講義録の形となっており、私の予習復習とヒアリングに基づく私的な解釈で記録されており、その文責はすべて私にある。」

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まえがき

 1965年は私の八幡製鐵入社9年目で、幸運が重なり合い社命で下記カリフォルニア大学バークレイ校の中間管理者向けとExecutive 向けの両プログラムに参画できた。

それは、米国企業でもコンピュータ利用の歴史は浅く、それを意識した「コミュニケーション」が主題の2週間にわたる中間管理者向け講義 ”The Berkeley Management Program”への参加話に始まった。願書を出すとその受講許可書に加え、その後一ヶ月間行われる“The Executive Education Program”への案内と願書が送付されてきた。後で聞いた所、私が5年前に米国大学院の修士号を取得し社長室所属だったからという。そのProgramは、米国大企業の社長・副社長が対象で、ホテルへ缶詰めで行われ、内容は多岐にわたり興味深いもので是非参加したいと思った。人事課長に希望をのべると参加費用を訊かれた。「いまの年俸の倍以上する」との私の答えに、「それを返せる自信はあるか」と質問された。私は「まだ33歳で定年の55歳までは20年以上あり返せる自信があります。できれば許可して下さい」といま思えば厚顔にも答えた。このようにして両プログラムへの参加が許可された。

Management Programは中間管理者向けで、言語学の教授と心理学の教授がその研究に基づく理論を実践例で説く、極めてアメリカ的な実効のある内容であった。それを要約すると「話では抽象性と具体例を織り交ぜる。リスクを伴うのが決断。決断時期の見極めが重要。その直前まで集めた情報に基づき決断する。折衝では彼我のroleとdemandの理解が重要」等々である。その後日本でも類似のHow toものを受けたが実践性では比較にならなかった。

ここでの学習内容は、その後の社内と国内外での管理者・コンサルタントとしての実務にはもちろん、早期退職後に情報経営学を担当した大学での研究・教育・行政面で大いに役立った。 講義概要は 等報告書のⅣ 章に当時の講義録に若干手を加え紹介する。

Executive Programは、経営者としての広範囲な知識と思考力を鍛える目的で、経営の根幹に関する考え方を多くの文献から読み取り、それらを参考に進められる講義や討論を通して学ぶと同時に、クラス参加の現役トップ経営者一人一人から人間的に多くを学び取れた。概要は 等報告書のⅤ 章に当時の講義録として紹介する。

 

最近、その報告書を見つけ読み返した。当時から45年以上経ったいま、学んだ当時には最新だった諸科学技術の内容の多くは陳腐化し、世界の社会・政治・制度面でもソ連邦の崩壊、テロへの対決など大きな変革があったが、歴史的な視点では共に参考にはなる。

一方、講義の中の人間性本質に関わる面での変化は余り見られないように思える。当プログラムの主役であるProf. Cheitは、最盛期とも見られる当時の米国での ”American Business、Business Creed” について、それが何で、如何に形成されてきたかを、自身の研究成果に基づく7回の講義とそれに関する出席者の現役トップ経営者間の討論で繰り広げた。それは一種のAchieving Society でありProgress and Efficiencyに象徴されるとの主張と私には受けとめられた。

その時(1965年)からの10年間は日本経済の最成長期で、Prof. Cheitが述べたAchieving Society そのものだったよう思える。この講義で、それは以後ずっと私の心に強く残ったのは「会社へのRoyaltyとは、会社へ自分個人の能力を捧げるだけでなく、会社をDevelopment vehicleとして利用し、一個人だけでは実現不可能な大事業を皆と協働し達成することで会社へ奉仕する。その過程で自分個人のみでは絶対に達成できない能力を向上させ、その一廻り向上した自分個人がまた会社に貢献するというgive and takeと考えるべきで、一方的に献身するのではない。」の言葉だった。講義中も出席できたこと自体が会社からの大きなtakeで次はgiveの番だと思った。そして、その通り、日本経済の急成長の期間に、君津製鐵所での生産管理に続く本社の受注システム構築など、何百人という人と共に極めて巨額の開発費を使い、その過程で歯車の一枚として、個人の力だけでは不可能な貴重な体験を得て貢献でき、その多くを海外技術協力に活かせた。また、退職後は、大学の教員という、会社員とは違い一個人としての業績が問われる環境に移り、それら体験した実務の学術的な整理・記述を通して経営情報分野の研究ができて、総じてgive よりtake が遙かに多かったことに感謝の念を強くする。

いま、日本はリーマンショックに続く東北大震災で重要な局面に差し掛かっている。日本の若い人には新しい日本というAchieving Societyを目指す団結力と能力は充分にあると思うが、同時にその方向を指し示す政治的なリーダーシップが大きく望まれると感じている。

講義内容を再読し、いまの時点でも有効な考えとその実現方策が多く含まれ、私の資料箱に眠らせるには勿体ないと思い、当時の手書き出張報告をパソコンに復元した。

(2011年記)

 

(出張報告書の復元版)

Ⅰ 出張の目的                                 昭和40年7月 井上 義祐

日本経済青年協議会(英文名 The Junior Executive Council of Japan 経済同友会など経済諸団体の機能別青年部の役をなし、加入会社720社余り。当社も加入している)

が、米国の経済管理と日本の経済管理とを比較研究し、あわせて両国の相互理解を深めるための具体的活動計画について米国経済同友会(Committee for Economic Development)と協議の結果、今年度より、JETプログラム(Junior Executive Training Program)として、青年協議会よりの代表一名を派遣し、米国カリフォルニア大学(バークレー)でのManagement ProgramおよびThe Executive Education Programに参加、米国の経営管理について学ばせ、またその実際について米国の代表的な会社を数社調査させて意見の交換をはかることが決められた。

その最初の適用者として経営における電子計算機の活用をサブテーマに米国の経営管理を学び相互理解を深めるため出張した。

 

Ⅱ 日程(昭和40年〈1965年〉5月1日~6月28

別紙参照

 

Ⅲ 携行書類(別紙参照-省略)

1 日本経済青年協議会よりの推せん状

2 自己紹介文

3 意見交換項目表

4 自己の業務に関する文献

(1)   Yawata Uses Computer as a Production Planning Tool

(2)   Optimum Control of Batch-type Furnace

 

Ⅳ  The Berkeley Management Programに出席して    別紙参照

 

Ⅴ  The Executive Education Program (第7回)に参加して   別紙参照

以上

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